血管性腫瘍、脈管奇形

単純性血管腫

真皮浅層で毛細血管が拡張して生じる、出生時から存在する境界明瞭な紅色斑です。終生、持続し、前額部と後頭部以外は基本的に自然に治ることはありません。加齢により、色調が濃くなっていき、暗赤色を呈することがあります。顔面では、まれに思春期以降に病巣が増大隆起し、その上に結節性隆起を多発することがあります。

特殊な病型として、前額部の真ん中にハート型に淡紅色の斑や、眼瞼に淡紅色うぃ呈するものをサモンパッチ、後頭部に生じたものをウンナ母斑と呼びます。教科書的には、サモンパッチは2歳までに自然消退するが、ウンナ母斑は自然消退しない、とありますが、臨床上は、消えずに残るサモンパッチもありますし、成長とともに消えるウンナ母斑も見かけます。

上の写真のように、大きく隆起しているものにレーザーを照射しても時間と回数とコストがかかりますので、手術で切除するのが一番です。小さいものはレーザーで早期に消すことが可能です。

当院の色素レーザー、Vbeam2はパルス幅可変型の効果の高いものですが、レーザー治療は色が薄いから消えやすいということはなく、やってみなければわからないことも多いので、まずはテスト照射を行います。効果が全くないということはほとんどありませんが、レーザー治療には回数とコストがかかりますので、費用対効果について相談させていただきます。

※治療は保険適応です。治療法と血管腫のサイズにより治療費は変わります。

毛細血管拡張症

真皮浅層にある毛細血管が拡張している状態を毛細血管拡張症といいます。一時的な炎症などによる毛細血管拡張ではなく、基本的には非炎症性で持続性に毛細血管が拡張しているものが治療対象になります。

肝機能障害や、ステロイドの長期投与などが原因になる場合もあります。

レーザー治療の効果は高く、顔では副次的な効果もあるため、満足度も得られますが、基礎疾患や、毛細血管が出やすい状態にある場合は、再発します。数か月に一回の治療が必要となりますので、それなりのコストがかかると思われます。

毛細血管拡張症の場合は保険適用可能となります。
※保険の場合、レーザー治療は3カ月に一回のみとなります。

Qスイッチレーザー照射法、面積 3割負担の場合、概算
全顔・185cm2 32010円
半顔・138cm2 26010円
両頬(鼻除く)・108cm2 21510円
鼻・鼻周囲・36cm2 11010円
口周り(ほうれい線内側)・27cm2 9510円
前額部・48cm2 12510円

いちご状血管腫

苺状血管腫の多くは生後1ヵ月以内に発生し、その後急速に大きくなり、生後3ヶ月~1歳でピークに達した後、2~10歳までに自然に改善していきます。そのため、昔は積極的な治療を行っていませんでした。しかし、苺状血管腫を自然治癒させた場合に紅色の部分が長期間続くと、凹凸の瘢痕を残し、醜状痕となることがあります。従って、最近では色素レーザーやドライアイスなどで早期に積極的に治療を行う場合があります。

当院でも苺状血管腫の治療にレーザーとドライアイスを使用しています。およそ3週間に1回、いずれかの治療をします。ただし血管腫によっては治療の回数が大きく違い、数回、場合によっては数十回を必要とすることがあります。また、どちらの治療も痛みを伴うので、必要であれば、治療の前に痛み止めのテープ、クリームで処置を行います。

治療目標
外観上わからなくなるまでを治療目標と考えていますが、さらに増大隆起していくものや、かなり大きくて治療に反応しにくいものについては痕を残す場合があります。もちろん自然治癒させた場合と比較すると、かなり改善はしますが、それでも痕を残した場合は、ある程度の年齢になってから出来るだけ目立たないようにする手術を行う必要があります。
そのため、痕を残すことにならないように出来るだけ早期に治療開始するべきです。見つけたらすぐに来院をするようにお勧めします。

レーザー治療について
赤アザ用の色素レーザーを使用して治療します。
レーザー照射後は徐々に赤黒くなっていき、紫色や黒色の斑点が出来たりします。
主に色素を改善する目的で治療します。

ドライアイス・液体窒素治療について
ドライアイス・液体窒素で苺状血管腫を数秒の間、冷凍凝固します。
主に隆起を平坦化させる目的で治療します。

腹部苺状血管腫、平坦型。平坦な場合は、比較的早く消退させることができます。
頭部苺状血管腫、隆起型。

隆起型の場合は、色素を消失させることができても、隆起が残る場合があります。上の写真では、運よく隆起を残さずに治療できました。隆起が残った場合でも成長とともに引き延ばされて目立たなくなることが多いです。顔や、骨の上など、隆起が目立ちやすい部位の場合は、追加で縮小させる手術が必要な場合があります。

※治療は保険適応です。サイズにより治療費は変わります。(乳幼児医療適用されます。)