ケロイドにはタイプがあり、それぞれ重症度と治療法が変わる場合があります。

同じような見た目ですが、治療法を誤ると悪化する場合がありますので注意が必要です。

いろいろな分類がありますが、治療という観点から、ここでは次の4つに分けます。

  1. 肥厚性瘢痕(外傷後ケロイド、術後ケロイド、帝王切開後ケロイド)
  2. アクネケロイド(ニキビケロイド)
  3. 耳垂ケロイド
  4. 真正ケロイド

ケロイドに共通して言えることは、硬く、赤く隆起し、痛み、かゆみを伴うことが多いということです。見た目、症状ともに不快で、気にされる患者さんが多いです。

1.肥厚性瘢痕とは

外傷後ケロイド、術後ケロイド、帝王切開後ケロイドと呼ばれるものです。


主にケロイド・肥厚性瘢痕の原因は、体質、部位、安静度、傷の発生原因、大きさ・深さ、傷の方向などによると考えられます。

帝王切開の場合、腹部はケロイドになりやすく、前後屈運動で安静は保ちにくく、手術創なので汚くは無いですが、長さ・深さがあり、腹部のシワは横方向なので縦方向は直交する方向です。リスクとしては高いので、ケロイド発生率が高いと考えて良いでしょう。

ご自分がケロイド体質かどうかわからない場合、初めての手術の場合は、予め後療法(※後述)を開始していただいたほうが良いと思います。1回目にケロイドになって、2回目以降の場合は、ケロイドになる事が確実ですので、後療法を積極的に行うことをお勧めします。

ケロイド・肥厚性瘢痕になると、痒みや痛みが発生する場合がありますので、たとえ傷跡なんか気にならないとお考えでも、予防的にしばらくの間、後療法を受けていただくことをお勧めします。

上の写真のように、体質によって形も様々に変化します。左は内服・外用治療やレーザーで改善が可能ですが、右のような場合は、既に大きくなりすぎて治療への反応が乏しい可能性があるのと、そもそもケロイド体質が強いので、手術を選択する必要があると思います。放置せずに早期に治療を開始すれば、手術以外の治療で改善する余地がありますので、できるだけ早く来院していただくようにお勧めします。

上の写真は、ステロイドテープで治療を行いました。場合によっては手術を行う事もありますが、まずは低侵襲(からだへの負担(侵襲)が小さい医療、切らない医療)を行い、効果が小さい場合は段階的に治療強度を上げていきます。

2.アクネケロイドとは

アクネケロイド、ニキビケロイドとは、その名の通り、ニキビから発生するケロイドです。ニキビの強い炎症により、硬く、赤く隆起した痕が長期にわたって残る状態です。痛み、かゆみを伴うことが多いです。

炎症の原因であるニキビ肌を同時に治療しておかないと、いつまでも炎症による刺激がおこり、治りにくい状態になります。

この方にはレーザー治療を行いました。きれいに治ってきていますが、回数と時間がかかります。

3.耳垂ケロイドとは

耳垂ケロイドは耳たぶに生じるケロイドで、ピアス後に発生したり、耳のアテロームなどのできものが炎症を起こした後に発生することが多いです。

やはり、痛みやかゆみを伴うことが多く、隆起します。赤みは必ずしも伴わないこともあります。

手術により改善されることも多いため、ケロイドの中では唯一、手術が第一選択となることが多いです。

この方には手術を行っています。体質により再発する場合もありますが、この方は再発なく、最終的に白い目立たない傷跡になりました。

4.真正ケロイドとは

真正ケロイドはケロイドの中で最もややこしいものです。ケロイドになりやすい体質であるということはわかっていますが、現在も原因は不明であることが多いです。

症状も一番強く、何よりも、小さな傷や、ちょっとした炎症から発生し、元の状態からどんどん大きくなるという厄介なケロイドです。

何も対策を行わずに安易に手術で切除すると、その切除した跡からさらに発生し、元よりも大きくなって悪化するので、注意が必要です。

このような外観で、記憶のないような小さな傷やニキビなどの炎症から発生し、徐々に大きくなってきます。
キノコのように盛り上がったり、鉄アレイ状になったり、見た目も症状もご本人にはかなり鬱陶しいものとなります。
ケナコルト注射で治療したものです。一時的に治まっても再発することもあり、やっかいなことも多いです。いろんな治療を試しながら、最適な方法を選択していきますが、症状や隆起が治まっても跡が残った状態はケロイド体質であるがゆえ、改善させることが難しいです。

治療について

保存的治療-後療法(コウリョウホウ)について
現在の医学でも、傷跡を完全に消失させることは不可能です。手術でメスを入れる限り、必ず傷跡は発生します。術後はこの傷跡をいかに目立たなくするかという事に治療の本質が変わっていきます。

形成外科では手術時にキズを目立たないように努力するだけでなく、抜糸後から、ケロイドを予防したり、傷跡を出来るだけ目立たないようにするために後療法ということを行います。後療法の考え方は、減張・圧迫・安静からなります。

①テープ固定:茶色のスキントーンテープというものを用いて、抜糸した後にキズを引き寄せ、固定します。(減張作用)

②圧迫剤の貼付:肌色に近い色のハイドロコロイド剤というものを貼付して、圧迫を行います。(圧迫・安静作用)
その他、スポンジの貼付や、コルセット固定など、厳格に安静が必要な場合もあります。
帝王切開などの腹部の傷跡の場合は、ガードルなどでお腹のお肉を中央に寄せるようにして固定するのも効果的です。(減張・安静作用)

後療法の期間の目安は、3-6ヶ月といわれておりますが、部位や体質により、期間が大幅に変わる事があります。短くて済む場合もあります。腹部ケロイドの場合は、体の中でも運動の大きい場所なので、期間が長くかかる場合が多いです。傷跡がやわらかくなり、白色瘢痕に変わっていれば、後療法を中止してよいと思われます。

内服治療リザベン(トラニラスト)内服について

抗アレルギー剤の一種ですが、ケロイドを鎮静化させる作用があります。一日3回の内服です。劇的な効果があるわけではないですが、補助的に有用な場合が多く、明らかに効いているという経過を見ることも多々あります。

外用治療について

塗り薬や、貼り薬で治療します。基本的には貼り薬のほうがよく効きますので、そちらを第一選択にすることが多いです。貼り薬は定期的にご自分で交換してもらいながら、ずっと貼りっぱなしになります。

ケナコルト注射について

ケロイドに直接注入します。かなりの痛みを伴いますので、他の方法で改善しない場合や、他の方法でケロイドを軟らかくしてから注入することが多いです。

女性の場合は、この注射により、生理不順が起こる場合があります。

レーザー治療について

必ずしもすべてのケロイドに効果が出るわけでは無いですが、レーザーでしか治せなかったという方も多数いらっしゃいます。一回で終了ということはなく、複数回かかります。

いずれにしてもケロイドの治療は長期間かかることが多いので、一部テストで試して効果を見ながら、治療を行っています。

液体窒素・ドライアイス治療について

液体窒素で凍結させる治療です。通常のいぼの治療に使う場合に比べて、かなり強く行います。施術時の痛みと施術後の痛みが強いので、局所麻酔が必要です。

効果は高いですが、ケロイドの部分がしばらくやけどのような状態になりますので、自宅で処置が必要です。

手術治療について

単純に切って取って治す治療とは違い、形成外科的な知識と技術が必要な複雑な形の切除を行います。術後に厳格な固定が必要な場合が多く、気軽に手術を行うわけにはいきませんが、必要なオプションとして、ケロイドの治療を行う上で持っておかなくてはならない治療法・手技です。

瘢痕拘縮形成術